【令八区画とは?】既存建物での店舗・旅館業リノベーションで工事費を抑えるポイント

 

 

 

はじめに

既存マンションや複合用途の建物で、店舗や旅館業を計画する際、消防設備の問題で想定以上に工事規模が大きくなるケースがあります。

これは、消防法では 基本的に「建物全体」を一つの防火対象物として考えるためです。
例えば、共同住宅の一部を旅館業に変更する場合、本来は宿泊部分だけを改修したい計画でも、建物全体に旅館用途側の消防設備基準が求められることがあります。

その結果、

  • 想定していなかった消防設備の追加
  • 共用部まで含めた改修
  • 工事費の増加

などが発生し、「現実的に事業化が難しい」というケースも少なくありません。

そこで検討されるのが「令八区画」です。

令八区画を活用できる場合、用途ごとに消防法上の扱いや消防設備を整理できる可能性があり、既存建物を活かしたリノベーション計画では重要な考え方になります。
本記事では、特に旅館業を計画するケースを例に、令八区画の基本的な考え方や、実務上どのように活用されるのかをわかりやすく解説します。

令八区画ってなに?

本来、消防法では建物全体を一つの用途として捉えます。
しかし、建物の用途によって必要となる消防設備や防火上の基準は異なります。

例えば、共同住宅や店舗、旅館など、異なる用途が一つの建物内に混在すると、建物全体に、より厳しい用途側の基準に合わせた消防設備が必要になるケースがあります。

そこで出てくるのが「令八区画」です。

令八区画とは、消防法施行令第8条に基づき、建物を防火上有効に区画することで、その区画部分を「別の防火対象物」として扱える考え方です。

建築図面・計画のイメージ

簡単にいうと、「防火上しっかり分けられているなら、消防法上も用途ごとに扱いを分け、消防設備も区画ごとに整理できる可能性がある」という制度です。

例えば、共同住宅の一部を旅館業として使用する場合でも、適切な区画が成立すれば、旅館用途ではない部分まで旅館仕様の消防設備を求められずに済む可能性があります。

実務上のポイント

令八区画は、既存建物を活用した旅館業や店舗リノベーションで有効な考え方ですが、単純に壁を作れば成立するわけではありません。

消防法上、別用途として扱うためには、防火上きちんと独立していることが求められます。
特に旅館業リノベーションでは、以下の点が重要になります。

  • 共用部が適切に分離されているか
  • 区画が天井裏まで連続しているか
  • 防火戸の仕様が適切か

例えば、壁で区切られていても、

  • 天井裏で空間がつながっている
  • 配管まわりの貫通処理が不十分
  • ダクトが未処理

といった場合には、令八区画として認められないケースがあります。

旅館業で変わる可能性がある消防設備

旅館・ホテル用途が入ることで、必要となる消防設備や設置範囲が変わる場合があります。
主に関係する設備としては、

民泊・旅館の廊下設備イメージ

  • 自動火災報知設備
  • 誘導灯
  • 非常警報設備
  • 消火器
  • 避難器具
  • スプリンクラー設備

などがあります。

通常、建物の一部に旅館用途が入ると、建物全体に対して消防設備を検討するケースがあります。
しかし、令八区画が成立すると、宿泊部分ごとに消防設備を判断できる可能性があり、

  • 全館改修を避けたい
  • 共用部工事を最小限にしたい
  • 小規模で宿泊事業を始めたい

といった計画整理につながる場合があります。

令八区画の注意点

一方で、令八区画は「成立すれば得」という単純な話でもありません。

令八区画を成立させるために、

  • 防火壁や防火戸の追加
  • 配管・ダクトの貫通処理
  • 区画延長工事

などが必要になり、結果的に工事費が大きく増えるケースもあります。
つまり、「令八区画にするための工事費が高くなりすぎると、本末転倒になる」ケースもあるということです。

また、令八区画は実際の建物状況によって成立可否が大きく変わります。
さらに、最終的には所轄消防署との協議が必要となるため、

  • 建物構造
  • 避難経路
  • 共用部の扱い
  • 防火設備仕様

などを含め、計画初期から建築・消防の両面で検討することが重要です。

適用例

今回の事例として、集合住宅の一角をパン屋として改修したケースをご紹介します。

本計画では、共同住宅の一部を店舗用途へ変更するにあたり、令八区画を前提として消防計画を整理しました。

店舗部分を防火上有効に区画することで、共同住宅部分と分けて消防法上の判断を行っています。

 

実際に必要になった防火設備

消防協議の結果、以下の設備を設置・整理する計画となりました。

  • 誘導灯
  • 消火器
  • 防炎カーテン等の防炎措置

一方で、

  • 新規の自動火災報知設備
  • 非常ベル
  • 避難器具

については、既存設備や建物条件を踏まえ、新規設置不要という整理になっています。
また、誘導灯についても、有窓階であることから、誘導標識で代替可能と判断される部分がありました。

まとめ

令八区画は、集合住宅や既存建物で店舗・旅館業などを計画する際に、消防法上の扱いを整理するための重要な考え方です。

適切に区画を行うことで、消防設備の範囲や改修計画を整理できる可能性がある一方、建物条件や消防協議によって判断が変わるため、計画初期からの検討が重要になります。

  • 集合住宅で店舗や旅館業を計画している
  • 令八区画が成立するか確認したい
  • 既存建物を活かしてリノベーションしたい

そのような場合は、お気軽にご相談ください。

 

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